親の面倒をみた人が多く相続できるの?(コラム)
こんにちは。なみき通り司法書士事務所の林真吾です。
今年も残すところあと1か月余りとなりました。
私は、年末に向けてのせわしなさが昔から好きです。
年内に片付けなければいけないことをバタバタと進めたり、忘年会で旧交を温めたり、
年賀状を準備しながら長らく会っていない友人のことを考えたりと、
今年を振り返り、そして良い年を迎えるためのこの過程が好きです。
良い年だったと言えるよう、あと一か月頑張ります!
寄与分とは?
今回は「寄与分」について書きたいと思います。
皆さんは「寄与分」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。
寄与分とは、故人(被相続人と言います)の財産の維持または増加について特別に貢献した相続人に、
その貢献度合いに応じて他の相続人より多く相続財産を取得することができる制度です。
例えば、農家のおうちで、奥さんは家事や育児だけでなく家業の農業についても給料を受けることなく
一生懸命働いていたような場合、ご主人が亡くなった際の相続では、
奥さんは遺産の大部分を占める農地の維持に特別な貢献をしたと考えることができます。
そして、相続財産を分ける際に、まず、その貢献度合いに応じた金額「寄与分」を相続財産から差し引き、
残りを他の相続人と分配します。そして、差し引いていた寄与分を奥さんの取り分に加えることで、
これまでの貢献に報い、家業を手伝っていない他の相続人との不公平感を解消することができます。
親の面倒を見た人が多く相続できるの?
しかし、この寄与分という制度、実務上はなかなか認められないのが現実です。
寄与分がよく問題となるのは、相続人のうちの一人だけが被相続人の面倒をみているようなケースです。
例えば、長男が親の面倒をみていて、次男は全く面倒を看ていなかったような場合、
親が亡くなると、ずっと面倒をみていた長男は、
「私がずっと親の面倒をみていたのだから、その分多く相続したい!」
と主張し、すると次男は、
「いやいや、そんなの関係ない!法律どおり均等に分けるべきだ!」
と主張して、争いになることがあります。
気持ちの面から言えば、ずっと親の面倒をみた長男に少し多く相続させてあげてもよさそうな気がします。
しかし、親と子の間には「お互いにちゃんと面倒をみなさいよ。」という扶養義務というものがあります。
そのため、長男が親の面倒をみていたとしても、それが通常の介護で扶養義務の範囲内であれば、
親の財産維持増加に貢献したとは言えず、寄与分が認められることは困難です。
また、寄与分はあくまで相続分を修正する制度であることから、相続人以外には認められません。
上記の例で言えば、親の面倒をみていたのが長男のお嫁さんであった場合、
どれだけ献身的にお世話をしていたとしても、長男のお嫁さんには寄与分は認められません。
さらに、寄与分は共同相続人全員の話し合いで決めるのが原則です。
もし話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所において決めることになります。
手間がかかるうえ、必ず寄与分が認められるとは限りません。
寄与分によるトラブルを防ぐには?
以上のことから、実務上、相続人間での合意がない限りは、寄与分は認められにくいのが現状です。
ですので、逆の視点から考えてみると、
もしお子さんに面倒をみてもらっていたり家業を手伝ってもらったりしている方で、
そのお子さんに少しでも多く相続させたいと考えている方は、ぜひ遺言書を残してあげてください。
その遺言書で面倒をみてもらったお子さんの取り分を多くすることで、
面倒をみたお子さんに感謝の気持ちを表すことができますし、
取り分に差をつけた理由をちゃんと遺言書の付言事項で説明してあげれば、
寄与分のありやなしやでお子さん同士が争ってしまうことを予防する効果が見込めます。
また、長男のお嫁さんなど、直接の相続人でない方に財産を残したい場合にも遺言書は必須です。
ぜひ遺言書の作成をご検討ください。