一度作った遺言をなおすには?(コラム)
こんにちは。
なみき通り司法書士事務所の林です。
8月も終わり、今日から9月に突入しました。
事務所の前の通りを、夏休みが終わった学生さんたちがたくさん歩いています。
夏休み明けの初日というのは、気が重いような、でも久しぶりに友達に会えるのが嬉しいような、
そんな気持ちだったと記憶しています。
私の夏休みの思い出は、大学時代、自転車にテントと寝袋を積んで、
北海道から鹿児島まで自転車で日本縦断ツーリングをしたことです。
地元の方が声をかけてくれたり、ご飯をご馳走してくれたりと多くの人に助けていただき、とても感激しました。
そして、この時の経験が、私の人生に大きな影響を与えているのは間違いありません。
いずれ、息子と一緒に自転車旅行に出かけるのが、今の私の夢でもあります。
一度作った遺言を直すには?
さて、今回のテーマは「一度作った遺言をなおすには?」です。
遺言を作った方が良い理由は、前回までのコラムでお話ししました。
では、せっかく作った遺言の内容を変更したい、
もしくは丸ごと書き直したい場合には、どうすれば良いのでしょうか。
法律上、
「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる。」
とあります(民法1022条)。
つまり、一度作った遺言でも、いつでも自由に変更したり撤回したりすることができるのです。
遺言を書いたが気持ちが変わったので書き直したい、
遺言に書いた財産を手放してしまった、
遺言で相続させるつもりだった子どもが本人より先に亡くなってしまった…
などのケースでは、現在の状況に応じた内容に書き直した方が望ましいでしょう。
それでは、具体的にはどのようにすれば良いのでしょうか。
上記の条文によれば「遺言の方式に従って」撤回することとあります。
つまり、一度書いた遺言を撤回・変更したい場合には、
新たな遺言を作って撤回することになります。
この場合、遺言の方式には特に制限がありませんので、
公正証書遺言の内容を自筆証書遺言で撤回するなど、
元の遺言の方式と違っていても特に問題ありません。
また、新たな遺言の中で明確に前の遺言を撤回していなくても、明らかに内容が矛盾している場合には、
後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる場合があります。
例えば、最初に書いた遺言の中に「甲不動産は子Aに相続させる。」と書いてあったとします。
しかし、その後書かれた遺言の中に「甲不動産は子Bに相続させる。」と書いてあった場合、
甲不動産はAとBどちらが相続することになるのでしょうか。
この場合、後に書いた遺言書によって最初の遺言書のうち甲不動産をAに相続させるという内容が
撤回されたものとみなして、後に書かれた甲不動産をBに相続させるという内容が有効になります。
この時、最初の遺言のうち、後の遺言と矛盾していない個所については
いまだ効力を持つことになりますので、どこまでが撤回されているのか不明確だと
後々トラブルの原因ともなりかねません。
できれば、前の遺言は明確に撤回したうえで新たな遺言を作成する方が良いでしょう。
なお、自筆証書遺言の場合は、その遺言書自体を破くなどして破棄してしまえば、
撤回したものとみなされます。
しかし、公正証書遺言の場合には、原本が公証役場に保管されていますので、
手元にある謄本を破っただけでは撤回したことにはなりません。
新しく遺言を作成しましょう。